鈴木晴也
山形県立遊佐高等学校 教育コーディネーター

#探究授業

#教員志望

#自分の言葉で伝える

【プロフィール】
福島県福島市出身。山形大学理学部理科学科で微分幾何学を専攻し、高校数学の教職課程を修了する。大学院へ進学するも休学・退学をして山形県遊佐町の地域おこし協力隊となる。3年間ハウスマスターを務め、4年目となった2023年より遊佐高校の教育コーディネーターに着任。

 

憧れていた教壇に教育実習生として初めて立った時「一斉授業への違和感」を抱いた鈴木さん。そこから、教育現場に携わる新たな選択肢として見つけたのがコーディネーターという職業でした。遊佐高校魅力化プロジェクトに携わるようになったきっかけや現在の活動、そこにかける想いについてお話を聞きました。

 

「数学の面白さを生徒に教えられる教員になりたかった」
―もともと数学の教員を目指していたのはどうしてですか?

「高校生時代、職員室という空間が大好きだったんです。職員室って、あらゆる教科・学問のプロが一緒に働く不思議な空間だと思うんです。そんな魅力的な空間で自分自身も働けるようになれたら幸せだと思い、教員を目指すようになりました。」

―ちなみに、どうして数学だったんですか?

「一番初めに数学が好きになったのは、中学生の時に三角形の合同証明が面白かったのがきっかけです。そこから大学の数学科では微分幾何学を専攻していたんですが、ただ一人で黙々と数字に向き合う時間ではなく、数学という共通言語を用いて仲間たちと一緒に悩んで議論しながら“数学する”時間が何より楽しかったんです。数学が面白いと感じつつ、『数学って人生になんの役に立つんだろう?そもそもなんでやるんだろう?』と自分自身が思っていたからこそ、そんな数学の面白さを生徒に教えられるような教員になりたいと強く思うようになりました。」

 

大学時代の数学科の仲間たちと写真を撮る鈴木さん(右下)

 

「教育実習を経験してぶつかった壁」

―教員という夢への大きな一歩ともいえる教育実習。ご感想はいかがでしたか?

「高校の数学教員になるための教職課程を専攻していた大学時代、教育実習生として母校の教壇に初めて立った時、『一斉授業が苦手』という自身の特性に気が付きました。生徒それぞれの個性や状況に合わせた授業をしたいと思う自分と、各生徒に対する平等性を求められる教員としての立場のギャップに悩みました。授業の仕方を工夫すればよかったんですけどね、当時の自分にはなかなかそれができなかったんです。結果的には、教員免許は取得したものの教員採用試験は受けず大学院に進み、もう少し時間をかけて自分の将来について考えることにしました。」

 

「大学4年、地域・教育魅力化コーディネーターという職業との出会い」

―将来への葛藤を抱えながらも大学を飛び出し“旅”に出たという鈴木さん。どんな出会いや気付きがありましたか?

「教育実習を経て『教育に携わるための選択肢は、本当に教員だけなんだろうか?』という疑問を持ち始めました。そこから、地元福島で小中高生と関わる事業のインターンに参加したり、学校・行政・民間のセクターを超えた学校と地域の連携に向けた取り組みのシンポジウムに参加したりして、教育に関わる産業の広さを知っていきました。その中で、『教育現場に携われるのは教員の仕事だけじゃない、学校と地域の縁(ふち)から教育に関わりつつ、いろんな人に出会えるという地域・教育魅力化コーディネーターという職業こそが自分の仕事だ』と気が付き、大学院を中退して遊佐町での暮らしがスタートしました。」

 

インターン先で主催する交流会の運営スタッフを行う鈴木さん(右)

 

「遊佐町に暮らして4年、等身大の自分のままで生徒と共に学ぶ日々」

―現在は遊佐高校の地域・教育魅力化コーディネーターとしてどんな活動をされていますか?

「2020年、山形県遊佐町の地域おこし協力隊に入り、まずは遊佐高校のハウスマスター(寮夫)として生徒の寮での暮らしに寄り添いました。そして今年2023年から、遊佐高校の職員室に自席を構えて地域・教育魅力化コーディネーターとして本格始動しました。現在の活動は①教員たちとの授業づくり②探究学習を行う遊佐みらい部の運営③入学生徒募集の3つがメインです。①の授業づくりでは『デュアル実践』という就職コース2年生の生徒が半年間、週に1度の頻度で行うインターンの設計を行っています。インターン先の事業所等との調整業務や生徒自身の振り返りのサポートをする中で、先生たちが生徒に伴走しやすい環境づくりができることに、非常にやりがいを感じています。②の探究学習では、生徒たちがそれぞれのプロジェクトを持っているのはもちろん、実は自分自身も1つ、独自プロジェクトを持って取り組んでいるんです。鳥肌が立ったり笑ったり涙が出たり、そんな体から感動を感じられるような学びこそが一生モノの学びになると考えて、先生や生徒たちと一緒に学ぶ日々を送っています」

 

―最後に、鈴木さんにとって地域・教育魅力化コーディネーターという仕事の魅力を教えてください。

「保護者でも先生でもない、等身大の自分のままで生徒と共に学んでいく存在として、一人ひとりの生徒に対して想いを乗せながら『指導』ではなく『対話』できるこの仕事にとてもやりがいを感じています。ハウスマスター時代の話にはなりますが、人生に思い悩む男子生徒と寮のキッチンで夜通し語らいながら、自分なりの人生の面白さや生きる意味を精一杯伝えました。その生徒とは卒業後の今も、交友関係が続いています。そうやって、等身大の自分らしさをさらけ出しながら生徒と関われることが、地域・教育魅力化コーディネーターという仕事の魅力だと僕は考えています」

(取材・文 樋野 奈々彩)

 

遊佐高校の生徒たちと話す鈴木さん(中央奥)

 

 

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