プロフィール
東京都出身。編集者として雑誌や広告等の制作を行う。2017年に津和野町へ移住し、町営英語塾HAN-KOH中等部で勤務の後、高校魅力化コーディネーターへ。2021年(一社)津和野まちとぶんか創造センターを設立。学校や地域の学びと創造を支える環境作りを目指し、活動中。
前職の経験を活かしながら、子どもたちの伴走を続ける玉木さん。教育の道を志したきっかけや、これまでとこれからの活動について、お話を聞きました。
「編集者から教育の道へ」
―大学時代は、ファッション系の制作会社やWebメディアで、インターンをされていたそうですね。こうした業界を目指すようになったきっかけは、何だったのでしょうか?
「昔から服が好きで、雑誌をよく読んでいました。美しい世界観を表現したファッションページを見ると、いつも心が惹かれます。次第に、私もこんなページを作ってみたい、編集者として、人に何かを訴えかけるような表現がしたいと思うようになりました。大学卒業後は、希望していた会社に入ることは出来なかったのですが、知人の紹介で、キッズファッション&ライフスタイル誌を発行している制作会社に、アルバイトとして働くことになりました。」
―制作会社では、どんな仕事をしていましたか?
「主に、担当ページの編集です。中でも印象的だったのが、撮影現場に来るキッズモデルのキャスティングやケアの仕事でした。自由奔放な子どもたちとどのように接すればよいか、どうすれば最高のコンディションでカメラの前に立てるかを、ずっと試行錯誤していました。」
―いい写真を撮るために、意識していたことはありますか?
「子どもと同じ目線で話すことを意識していました。そうすることで、信頼関係を築くことができ、通じ合うことができましたね。このような経験を繰り返している内に、大人の関わり方次第で、子どもたちの中にある可能性はいくらでも花開くのではないかと思うようになりました。こうした関わり方を、撮影という短い時間ではなく、もう少し長いスパンで探究していきたいと考え、教育の道を志すことになりました。」
ファッションページの撮影で行ったフェロー諸島の子どもたち
「津和野町での活動内容」
―教育について調べていく中で、津和野町の取り組みを見つけたそうですね。着任後は、どんなことに取り組みましたか?
「はじめは、町営の英語塾で中学生を担当し、学習がしやすい環境づくりを進めました。その他にも、高校の探究学習やマイプロジェクトの伴走、別エリアの公営塾の立ち上げ、中学校の英語の授業支援などを務めていました。」
―塾の活動以外にも、様々なことに携わっていたのですね。3年間の任期が終わると、より高校生と接することができる、コーディネーターとして活動することになります。仕事の内容には、どのような変化がありましたか?
「現在は、大きく分けて、2つの業務を担当しています。1つは、高校で実施しているものです。生徒募集や課程内外の生徒のプロジェクト伴走、県外から来た生徒の暮らしサポートに関わっています。もう1つは、財団法人内で行っているものです。高校チームの主任として、予算や事業計画の策定などをしています。年数を重ねるに連れて、行政や学校の管理職とのやり取りが格段に増えてきたように思います。」
―授業外でも、探究活動を行う生徒がいるとお聞きしました。実際に、どんな活動をしていて、どのようなサポートをされていますか?
「津和野高校は、グローカル・ラボという地域系部活動や探究活動が盛んです。生徒は、興味を持ったことに対して、主体的に探究活動を行います。私は、一緒に悩んで考え、問いを投げかけることが多いです。話をすることで、元気をもらえ、新たな発見から学びが得られることもあります。また、活動を通して、自分自身のことを深く知り、その後の進路に繋がる生徒もいます。このような瞬間を目にすると、やりがいのある仕事であると、改めて感じます。」
課外のプロジェクト活動「津和野高校断熱改修プロジェクト」の様子
「伴走者の輪を広げる」
―その他にも、実践している活動はありますか?
「2021年から(一社)津和野まちとぶんか創造センタ―を設立し、子どもたちと地域の方々が、学校外で交流できる場所の運営を行っています。学校の中だけではなく、普段あまり接することのない大人と子どもが出会い、交流することでお互いに刺激を与え合う環境を作りたいと思っています。こうしたきっかけから、地域の大人が高校生の伴走者になる等、伴走の輪が広がり、そこから得られる喜びを感じられる人が増えると嬉しいです。子どもたちの可能性を広げる大人の関わりについては、研究途中です。子どもたちが困っているときにサポートができるよう、経験を通じ、より学びを深めていきたいと思います。」
「自分の気持ちを大切に」
最後に、これからコーディネーターを目指す、皆さんに向けてメッセージをいただきました。
「私は、教育学部や業界の出身ではありませんが、今までの人生やキャリアの経験が活きていると感じることが多くあります。地域や学校によって、求められるコーディネーター像は多種多様です。だからこそ、誰もが活躍できる機会や場所があり、面白い化学反応が起きる可能性を秘めています。専門的知識の有無に関わらず、目指したいという気持ちを大切にしてほしいと思います。」
地域に設けた拠点「TAGO HOUSE ANNEX」に休日高校生が集まってきている様子