プロフィール
奈良県広陵町出身。大学卒業後、JICA海外協力隊の体育隊員としてアフリカ・ウガンダ共和国で活動。2016年、帰国後すぐに海士町へ移住し、公設塾隠岐國学習センタースタッフとして島前教育魅力化プロジェクトに参画。その後、2020年より高校魅力化コーディネーターに着任。
島根県隠岐郡海士町にIターン移住し、隠岐島前高校のコーディネーターを務める、新立みずきさん。高校卒業後は、体育教師になることを視野に入れ、教員免許が取得できる大学に進学したと言います。その後、新卒で選択したのは青年海外協力隊。これまでのキャリアと現在の活動について、お話を聞きました。
「学校の先生になるために…」
―早速ですが、卒業後の進路を決めたきっかけは何だったのでしょうか?
「大学進学後も教員志望だったのですが、心のどこかで、先生になる前に充実した社会経験を積みたいと考えていました。そんな大学2年生のある日、同じ学部学科の卒業生で青年海外協力隊経験者の話を聞く授業がありました。この日を境に、現実的な選択肢として意識をするようになりました。」
―中々、勇気のいる選択だったのではないでしょうか?
「そうですね。先生になりたいという気持ちは暫定一位のままでしたが、卒業後すぐの進路については、とても迷いました。ただ、教員を辞めてから、新しいことに取り組むビジョンがあまり見えなかったため、今しかないと決心することができました。」
「高校魅力化プロジェクトとの出会い」
その後、高校生と寮教育をキーワードに次の仕事を探しているとき、高校魅力化プロジェクトの取り組みに出会ったといいます。当時、新立さんは、前職の青年海外協力隊の任期が終わり、ウガンダから帰国したタイミングでした。
「海外での経験を通して、次は、より先生に近い立場で違う関わり方を見てみたいと思っていました。派遣先の学校は、いわゆる中高一貫校で全寮制。寮では、親元を離れた生徒が共同生活を行っており、上級生が下級生の面倒を見るなど、いつも助け合う姿がありました。現地の生徒と関わる中で感じたのは、日本に比べ、自立心や意思表示が強い子どもが多いということです。いろんな人と毎日を過ごす環境が理由の1つだと思い、子どもたちが自立をしていく仕組みとしての寮に興味を持つようになりました。帰国後、日本でもそのような取り組みを探している中で、高校魅力化プロジェクトを知りました。」
ウガンダで体育の授業を行う新立さん
「島の暮らし」
―同様の取り組みを実践している地域は、他にもあったかと思います。海士町を選んだ理由はありますか?
「場所のこだわりは、特にありませんでした。強いて言うなら、今まで内陸に住むことが多かったので、離島という環境に少し憧れがあったことでしょうか(笑)。ちょうど帰国した時期に求人があり、年度途中の転職が可能だったことも決め手の1つです。海士町の暮らしは楽しいです。移住者が多く、交流機会があるのもいいですね。地域の皆さんの温かさと程よい刺激を感じながら、日々を過ごしています。」
「コーディネーターの活動内容」
―移住してから3年半は、公設塾の隠岐國学習センターのスタッフとして、主に高校3年生の学習指導や進路相談を担当したとお聞きしました。現在は、コーディネーターという肩書に代わっていますが、主にどのような活動をしていますか?
「現在の活動内容は、大きく分けて4つです。1つ目は、探究授業のコーディネートです。これは、学年部の先生と相談しながら年間計画を策定し、実行するというものです。仕事の範囲は幅広く、授業内で生徒の伴走を行う機会もあります。2つ目は、生徒募集です。進学を検討している中学生に向けて、説明会を開くのが主な業務です。3つ目は、地域内の小中学校との連携です。定期的に小中高生の合同授業などを行っています。大切にしていることは、気づきや刺激、視点の多様性を生む機会を作ること。年下の子どもたちとコミュニケーションを取る中で、改めて自分自身を振り返る生徒も多いように感じます。4つ目は、学校経営目標の推進です。これは、授業の魅力向上や内省機能の強化など、年度ごとに重点目標を掲げて、取り組んでいるものになります。」
―様々な立場で、沢山のことに取り組まれているのですね。新立さんが、活動の中で意識されていることや、大事にしていることはありますか?
「自分の考えを押し付けない、そして、決めつけないということを意識しています。これは生徒のみならず地域の協力者に対しても同じです。正解を示すと、せっかくのいいものが出てこないような気がしています。答えを出すことや、目的を明確にすることは重要ですが、対話を通して出てきたその人らしさを大切にするようにしています。」
探究授業の様子
「つながりが増える面白さ」
最後に、これからコーディネーターを目指す、皆さんに向けてメッセージをいただきました。
「地方はコミュニティが狭いので、生活や仕事をしていく中で知り合いがどんどん増えていくことが多いです。私が住んでいる場所は、離島ということもあり、その特性が顕著に表れている気がします。仕事に取り組む際も、何がしたいかより、誰としたいかを考えることが多くなりました。このような、人のつながりを感じながら毎日を送りたいと思っている方には、おすすめの仕事かもしれません。」
地区の運動会にて