プロフィール
1992年生まれ。立教大学観光学部卒。在学中に、様々な地域を調査する中で、地域における人材育成に興味関心を持ち、教育分野へ。沖縄県で高校魅力化プロジェクトに携わる中、大人が学び続けることの大切さに気付く。2019年にNPO法人シブヤ大学に入社し、翌年学長に就任。社会のことを安心して話せる、学びの場づくりに邁進中。
家族旅行をきっかけに、大好きになった沖縄県今帰仁村(なきじんそん)にIターン移住し、公営塾の立ち上げや運営に携わった大澤さん。3年間の任期を終え、現在は、東京のシブヤ大学で学長をされています。これまでの経験や、取り組みへの想いについてお話を聞きました。
「夢の沖縄生活」
―大学は、観光学部の交流文化学科に所属し、観光を通じた人づくりやまちづくりを学んでいたと言います。就職活動中は、どのような軸で働き先を探していたのでしょうか?
「どこかの地域に根差しながら、働きたいと思っていました。特に、沖縄に住みたいという気持ちが強かったので、就職先は県内に絞って探していましたね。その後、今帰仁村の求人を見つけて応募しました。」
―元々、教育に興味があったのですか?
「そうですね。学校教育というところ以外で、人材育成に取り組みたいという気持ちがありました。きっかけは、大学時代の活動です。いろんな地域や人を取材する中で、キーパーソンに出会うことが多く、そのような方がいる地域は活力があると感じていました。人を通じた地域づくりに関心があった私にとって、高校魅力化プロジェクトの取り組みは、まさにやりたかったことでした。」
「今帰仁村での活動内容」
―大好きな場所で、やりたかった仕事を始めた大澤さん。着任後は、どのような活動を行いましたか?
「まずは、高校生が通う公営塾の立ち上げに関わりました。名前も場所も決まっていなかった状態から始め、開設後は、生徒募集や受験指導を担当しました。3年目からは、塾長兼地域コーディネーターとして、地域の方を交えた学びの場を企画したり、村の皆さんに塾の様子をプレゼンしたり、塾と地域をつなぐ役割を担っていました。」
―活動の中で、意識していたことはありますか?
「地域の行事に、積極的に参加することを意識していました。村内初めての地域おこし協力隊員だったこと、塾が出来てから間もなかったことを理由に、まずは地元の方に知ってもらうことを目標にしていました。また塾内では、生徒と年齢が近い、地域外の大人だからこそ話せるような雰囲気を大切にしていました。実際に、生徒も、塾へ学びに行くという前向きな姿勢で来るので、心を開いてくれやすかった印象があります。」
―3年の任期を終わると、村を離れることになります。大好きな場所を去る決断をされた理由は、何だったのでしょうか?
「将来のキャリアを考える中で、もっと自分にできることを増やしたいと思っていたからです。今帰仁村での生活は、居心地が良すぎるあまり、そうした環境に甘えてしまうこともあって。村に残る選択肢として、起業することや役場に就職することも考えましたが、悩んだ末に、別の場所へ行くことにしました。」
高校生と地域の大人がともに学ぶ、オープンゼミの様子
「みんなの学ぶ場所をつくる」
次の就職先を探す中で、今の職場である、シブヤ大学に出会います。名前を聞いたことはあったものの、どんな活動をしているかを調べていくと、以前から興味関心があった分野に近い事業をしていることを知りました。
「シブヤ大学は、地域密着型の学びの場づくりを中心に、日常の中で、新しい何かに出会い続けていくための機会を作っている団体でした。一番の驚きは、参加費が無料だったこと。小さな町の公営塾の取り組みではなく、東京で、誰でも無料で学べる環境を作っている点に驚きました。以前から、誰もが学びたいことを学ぶ、話したいことを話せる場を作りたいという思いがあったため、自分がやりたかったことを実践できそうと感じ、入社を決めました。」
―授業を教える側から、作る側になったのですね。具体的には、どんなことに取り組んでいますか?
「授業の企画をはじめ、皆さんが作る授業のサポートに取り組んでいます。実際に企画をしてみると、受ける側より作る側の方が、学びを得られることが多く、楽しさを感じることも多いです。より多くの人に、そのような体験をしてほしいという思いで、学びの場づくりに関わる人を増やすことに力を入れています。」
原宿にある都市型工房で授業を行う様子
「地域でしかできない交流を楽しむ」
最後に、これからコーディネーターを目指す、皆さんに向けてメッセージをいただきました。
「公営塾と普通の塾が違う点は、学校や地域の方々など、関わる人が沢山いることです。言い換えれば、いろんな方が応援してくれる可能性を持っている場でもあります。この仕事の醍醐味は、自分のやりたいことと、地域が必要としていることの刷り合わせをしながら、協力者を見つけ、人を巻き込んでいくことだと思います。地域の暮らしも楽しみながら、皆さんが喜ぶ場づくりに、ぜひ挑戦してほしいと思います。」
仕事の合間にパワーをもらっていた、今帰仁村の赤墓ビーチ